きれいの手びき #003 ~忙しい年始の心のケアを丁寧に~

2023.01.05
あなたの美しさをつくりだしている源はなんですか?

おいしいものを食べたり、可憐な花を見たり、ふとした人の優しさに触れたり、はたまた「推し」の動画を見たり……。
朝夕のスキンケアとともに、薄いミルフィーユを重ねるように、心が動く日々の小さな幸せも、きっとその要素になっているのではないでしょうか。

このコラムでは、そんな「美しさの源」になるような、毎日の暮らしで実践できるシンプルなアイデアや、季節のミニ知識をお伝えしていきたいと思います。

年末年始こそ、心を主人公に。

今回は「美しさの源」の1つとして、年末年始にかけての忙しい時期に、体の疲れをいたわるように行う心のケア方法についてお話したいと思います。

仕事も暮らしも慌ただしくなり、寒さも厳しくなることから、体調を崩しがち。でも時間に追われている師走だからこそ休むことが難しく、年末年始に疲れがたまってダウンしてしまう……。そんな経験はありませんか?

熱が出たりだるかったりと、体はわかりやすく不調をあらわにしてくれますが、心や精神面はどうでしょう。体のケアは質の良い睡眠をとる、消化によく栄養価の高いものを食べるなど対処方法を皆さんもご存知だと思いますが、心の疲れやその回復方法となると首をかしげてしまうのではないでしょうか。

近年は瞑想(メディテーション)やマインドフルネスなどの流行で、メンタルの整え方の情報は簡単に手に入るようになりました。静かに目を閉じて鼻呼吸をする、ゆっくり湯船に浸かる、寝る前にスマホは見ない、など自分のスタイルに合ったものをいくつか習慣にしていれば、忙しくても心の健康が大きく崩れることはないかもしれません。ですが、年末年始は少し違いますよね。普段とは異なるスケジュールをこなす、締め切りや時間の制限のある仕事や行事に追われる、などで見えないストレスは少しずつたまっているものです。

心と体はつながっています。体調が悪くても心が元気だと、気持ちをぐっと引き上げてくれて、体が軽やかになることがありますよね。逆に心や精神・神経が疲れきってしまうと、体が重かったり動くのがつらかったりすることがあります。12月から1月にかけては、体だけでなく心もケアする意識をもつこと。大きな不調を招く前に心がけたいものです。

今回はこの時期にこそぜひ試してもらいたい、心を整える方法を3つご紹介します。

年末から年始にかけての心の整え方 3Tips。

Tip1. 自分にご褒美となるような、小さな楽しみを多くもつ(考える)
「この仕事が終わったら好きな花を買って帰ろう」「普段は手が出ない高級チョコを週末は食べよう」「評判のヘッドスパを堪能しよう」「時間を気にせずゲームをしよう」など、がんばった自分に“喜び”を与えてくれることをたくさん用意しましょう。体内には何かをやり遂げて、そのご褒美が与えられたときに、「しあわせ~」と幸福感を与えてくれるドーパミンという神経伝達物質があります。ドーパミンをなるべく長くつづけて放出するには、小さくてもなるべく多く「これをやろう→できた!」の繰り返しをすることがコツ。まとめて大きなご褒美を自分にプレゼントするより、こまめに頻繁に喜びを感じられるご褒美を考えて幸せ時間を継続しましょう。

Tip2. 「ありがとう」を伝えてハッピーを2倍に
うれしいとき、助けてもらったとき、感謝の気持ちは言葉にして「ありがとう」と伝えましょう。ある研究*によると、人はボランティアや支援などで誰かの役に立つことをしたり、感謝を受けたりすると、高い幸福感を得るそうです。「ありがとう」の言葉があると、相手も気持ちよく、お互いがハッピーになれます。忙しく疲れているときこそ、言葉や表情を使ってしっかり伝えましょう。

*Dunn et al. (2014)

Tip3. 七味五悦三会を大切にする
江戸時代の習慣のひとつに「七味五悦三会」があります。大晦日に家族や親族が集まり、「七味=おいしかった七つ」「五悦=楽しいことや嬉しかったこと五つ」「三会=喜ばしい出会い三つ」を、ひとりずつ話してその年を振り返ったそう。友人、パートナーなどと語り合ってもいいし、普段は忙しくてゆっくり会話することができない知人と、これを機にオンラインで再会するのもいいかもしれませんね。大切な人たちと楽しい時間を経て、心を弾ませて新年をスタートすることができたら、心はすっかり整っているはずです。

幸せな心は「美しさの源」の大切な要素。皆さんの心のケアがさらなる美しさを引き出しますように……。


illustration : CHIHIRO YOSHII
WRITER
岡村 貴子 - Okamura Takako -
日本第一号のオーガニックコンシェルジュ。現在は企業のウェルネスデザイン研究所の所長を務め「仕事も暮らしも自分のウェルネスは自分でデザインする」ことを推進している。植物療法士、キャリアコンサルタントなどとしても活動する。著書に『おつかれ女子のウェルネス手帳』(幻冬社)、『オーガニック入門』(ソニーマガジンズ)。