今さら聞けない私たちのからだのこと - PMSって何?

2023.01.07
あなたのからだのこと・からだの中で起きていること、あなたはどれだけ知っていますか?

好きなことに対しての熱量は高いのに、自分のからだのこととなるとついつい疎かになってしまったり、後回しにしてしまったり。悩みがあっても「今さら聞くのは恥ずかしい」気持ちが顔を出してきてそのままにしてしまったことはありませんか?

「もっと早くに知っておけばよかった」を巻き戻すことはできないけれど、「今知ってよかった」を重ねていくことはできます。この連載では、sowaka women’s health clinicの竹元葉先生に、私たちのからだのこと・からだの中で起きていることを基本の基から聞いていきます。
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PMS(premenstrual syndrome:月経前症候群)って何?

初っ端からそもそもの質問をしてしまい恐縮ですが、PMSって何でしょうか。自分自身生理前にはお腹が痛くなることがありますが、あれはすべてPMSなの……?

竹元先生
まず、大前提ですが、PMSとはきちんと排卵(※1)しているからこそ起こる症状です。

※1 排卵・・・卵巣で育った卵子が外に飛び出すこと。一般的には生理と生理の間に1度起こります。

なるほど……? 排卵がキーポイントということですね。生理前に起きることもあり、つい生理を中心に考えがちです。

竹元先生
症状は、体の不調として腹痛、腰痛、頭痛、むくみ、胸の張り、めまいなど。心の不調としてはイライラ、抑うつ、不安、情緒不安定、無気力などが挙げられます。特に精神的な症状が強い場合は月経前不快気分障害(PMDD)とも。

たくさんありますよね。なんで起きてしまうんでしょう。

竹元先生
先ほどきちんと排卵しているからこそ起きる症状とお話しましたが、排卵後に、卵巣から黄体ホルモンと卵胞ホルモンという2種類の女性ホルモンが出ます。その2種類のホルモンが急激に低下した後に生理が来るのですが、PMSはこのホルモンの分泌量の急激な変化によって起きる症状といわれています。生理前3日から10日くらい体や心の不調が続き、生理が来ると症状は軽くなります。どんな症状が出るかは個人差が大きくて、体の症状がメインで出る人もいれば、精神的にすごく落ち込んでしまう人もいて、本当に様々です。

からだに痛みが出たりメンタル不調になるのは辛いですが、正常に排卵している証拠、とも受け取れるんですね。

竹元先生
はい、排卵が何らかの理由でうまくいってない方は基本的にはないものなんです。出血はするけれども実は排卵していない人もいます。(編集注:この辺の話はまた別の機会に詳しく伺いたいと思います。)

ちなみに、低気圧の時に頭痛になったりからだがだるくなったりしてしまう人もいますが、考え方は似ていますか?

竹元先生
原因は異なりますが、PMSはホルモンの分泌量の変化、低気圧による頭痛も気圧の変化で引き起こされるので、考え方は似ているかもしれませんね。人間は急激な変化に弱いです。

腹痛や胸の痛みなどは割と分かりやすい症状として共感できる方が多いと思いますが、心の不調については常日頃から若干落ち込みやすい人や、日々ストレスに晒されていてイライラしがちな人の場合、どこからがPMSなのか分かりづらい気がします。

竹元先生
確かに、普段からストレスがかかる環境にいる場合は、これがPMSなのかストレスから来るものなのかすごくわかりにくいんですよね。それを知るためにもまずは記録を取ってみて欲しいです。生理前の決まったタイミングでカラダやココロの症状が現れて、生理が来ると軽くなるというのがほとんどの周期で起きている場合はPMSと捉えます。

あまりにも普段の感情を超えて浮き沈みしてしまうだとか、日常生活にも支障がある場合は治療をおすすめします。最近はアプリなどで生理の症状を記録できるものもたくさんあります。まずは数周期分、自分の心や体の状態をメモしてみて、自分の生理の癖を知ってほしいです。

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生理日を管理するアプリを使っている方は私も含め多いと思いますが、本当に生理日を管理するためだけに使っている人も少なくなさそう。生理がないときでも症状をメモしておくことが重要なんですね。

竹元先生
最近は症状を入力しておくと、「そろそろイライラが始まる時期ですよ」といった通知を届けてくれたり、パートナーと共有できるアプリもあるみたいなので、自分にあうツールを探してみるのもいいかもしれませんね。

PMSで気持ちが落ち込んでいる時に、自分の状態をうまく言葉で伝えられなくて言い合いになってしまったという声を聞くことがありますが、アプリでサポートしてもらえるのはいいですね。テクノロジー……。先ほど個人差というお話もありましたが、PMSになりやすい人や体質を教えてください。

竹元先生
大きな要因としてはストレスです。ストレスが高くなると情緒を安定させるセロトニンと呼ばれる脳内の伝達物質が減るのですが、生理前はそもそもそのセロトニンが減る時期なので、気持ちの振れ幅が大きくなってしまう方は多いです。今まで問題なかったとしても就職や転職、引っ越しなどの環境の変化や、疲れや睡眠不足、生活リズムの変化などで症状が悪化してしまう方はよく見受けます。

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環境が変わるのってものすごいストレスですよね。

竹元先生
ストレスをためないで生活してくださいって、すごく難しい話なんですけどね。

ちなみに、もともと性格が落ち込みやすいとPMSになりやすいのでしょうか。

竹元先生
それもあると思います。もともとの気質として変化が苦手だったり、小さなことでも大きく受け止めてしまう性格の方は、ホルモンの変化も相まってさらに気持ちをコントロールしにくくなってしまうこともあります。あとはカフェインやタバコの摂取もあまりよくないと言われていますし、睡眠不足や夜勤が多いなど不規則な睡眠もPMSになりやすい要因の一つに挙げられます。

PMSに対して私たちができることって何でしょう。

竹元先生
先ほどもお話しましたが、あらかじめ自分の生理の癖を知っておくと。「この時期にこの症状が出やすい」とわかっていれば、あらかじめ気持ちの準備ができて対処が遅れることが少なくなります。まずは自分の生理のトラッキングからはじめてみましょう。あとは冷えないようにするとか。意外と適度な運動をするのは血流が良くなるのでオススメです。心にとってもからだにとっても。マッサージやヨガ、軽い運動や瞑想(メディテーション)もセロトニン分泌にいいといわれています。後はとにかくよく寝ること。やっぱり、朝起きて陽の光を浴びて、規則正しい生活をしてよく寝てほしいです。様々な理由で難しい方もたくさんいると思うのですが。

睡眠って本当に大切なんですね。痛み止めについても聞いてみたいです。結局のところ、いつ飲むのがベストなんでしょうか。

竹元先生
まず、「痛み止め飲まなくても我慢できます」という方が本当に多いんですけど、我慢しなくていいということを伝えたいです。そして質問の通り飲むタイミングが肝で、痛みがピークに達してから飲んでもあまり効かないんです。「痛くなるかもしれない」くらいのタイミングで飲んでいただいた方がいいです。

痛み止めは痛くなってから飲む(症状が出てから飲む)ものだと思っている人が私を含め多いかもしれません。これから痛くなるのが分かっていたら飲んでもいいものなんですね。

竹元先生
なんか怪しいな?と思ったら飲んでしまって大丈夫です。月経周期のうちのたかが数日、1日3回痛み止めを飲んだだけで、痛み止めが効かなくなったり癖になったりすることはありません。早め早めに上手に痛み止めを使っていただく方が楽に過ごせると思います。日本って我慢できるものは我慢するという文化がまだまだ根強いと思いますが、痛み止めを飲んで元気に過ごせるならそちらのほうが断然いいです。

市販の痛み止めでも症状が治まらず病院に行った場合、どのような対応をしていただけるのでしょうか。

竹元先生
セルフケアのアドバイスから漢方や痛み止めの処方など。最近は症状緩和のためのサプリメントもあります。また、根本的に月経を軽くする方法としてピルの服用を提案することも。症状に個人差があるのと同じように、対処法も絶対的な正解はありません。自分の症状やライフスタイルの考え方によって治療法にも選択肢があります。

自分の症状やライフスタイルに合う治療法を見つけることが大切なんですね。

竹元先生
そうですね!

interview・text:貴子