わたしをつくる美的小物 vol.4 行方ひさこ

ブランディングディレクターとして、工芸・アパレル・フード・ビューティなど幅広い分野で作り手たちと仕事をしている行方さん。全国津々浦々、精力的に活動する行方さんの「美」をつくる美的小物とは。

毎日飲むお茶

お茶には効能もありますが、家で仕事をするときなど、手軽に気分を変えられるのでたくさん常備しています。夏は〈BASIL HOUSE〉のバジルティーを水出しにして飲み、〈杉本薬局〉のチャイは体を温めたいときに飲んでいます。ミルクで割ったり煮出したりしなくてもおいしいチャイはあまりなくて重宝しています。

丹波篠山にある〈岩茶房 丹波 ことり〉の中国茶もたくさんの種類を持っているし、オーナーが素材にこだわったお菓子やドライフルーツも作っているので、篠山に行くと買って帰ってきますね。これ以外にも、抹茶や中国茶はきちんと茶器を使って淹れるなど、お茶に合わせた飲み方をしています。

作り手のわかる日々の調味料

普段外食が多いので、できるだけ家で食べるものはニュートラルなものにしたいと思っています。添加物が入っているものすべてがダメなわけではないけれど、すべて避けることはできないからこそ、家では素の状態にしておきたい。

合成洗剤とか、着色料、保存料に厳しい家で育ったので、その教えが身についていて、今でも自然とそういうものを選びます。中学生のときは食品成分表が愛読書で、オーガニックスーパーで買った食品の成分表を見て工場に行ったりもしました。ダイエットで失敗したこともあって、食や栄養素に興味があったんです。

調味料はできるだけしっかり選びたいです。友人のシェフに聞いて生産者さんのところに行くことも。どういう人がどういう思いで作っているのかを知ることで、応援したくなる。個人や小さいところで思いをもって頑張っている人はちゃんと応援したいと思っています。

睡眠の質を上げるパジャマ

引っ越して、眠りに集中できる寝室を作りました。でも眠れなくてもあまり気にしないようにしています。2、3時間しか眠れなかったとしても、明日眠れば良いかって感じで。

パジャマにこだわるようになったのはわりと最近で、誰かに見せるわけではないものをこだわりのあるものにするのはいいなあって。〈Cebalasi〉のパジャマは、家での時間をもっと豊かにという思いで作られたシルク100%のもの。家が真っ白なので、こういう濃い色もいいなと挑戦しました。

予定が何もない日は一日中パジャマでいいって思っています。漫画一気読みとか、大河ドラマ一気見とか、何かしらインプットになるようなものを選んで、1年に１、2回、ずっとパジャマで家に篭る、そんな日があるんです。

心に刺激をくれる美しい本たち

金鉱、木、磁器、李禹煥、名画の中の料理……。本棚からがさがさと取ってきた本たちで、1冊ずつ特別な理由があるわけじゃないんですが、本から刺激を受けることが多いので持ってきました。

知らないことが多いので、時間が空いたら勉強したいと思っていて、興味の対象をひたすら見たり読んだりします。知らなかったことを知ったときの刺激が好きですね。実際に見てみたくなって、本をきっかけに行動することもあります。調べ物や、眺めるだけで気持ちのいい本は、近くに置いておくようにしています。読みたい時にそばにあるようにしているんです。

部分ではなく、全体の「美」

美的小物といっても、装飾品やヘア・ネイルなどの部分的なケアより、身体に取り入れるものや全体的なバランスをとることが大切だと思います。

たとえば、オーガニックを食べたからすぐに好調になるわけでも、体に良くないものを食べたからすぐに悪くなるわけでもないですよね。変化があれば気付けるけど、わからないから怖い。だから私は、軸を意識的に中心に寄せておきたいんです。

揺らされても、中心に戻る

20代の頃、自分の感情が抑えられない、落ち込みがちな時期がありました。いろいろな人の感情を受け止めすぎていたのかもしれないし、ホルモンバランスのせいかもしれないんですが、自分でバランスを取らないといけないなと思って。今は振り子みたいに、揺らされてもいいから中心に戻るように気をつけています。

だから、食べ物とか匂いとか、すべてが心身を整えるために必要なことなんです。でも、こだわりすぎると辛くなっちゃから、ほどほどに。好きなものは絶えず変わっていくから、ものや人に傾倒しないことも大切かなって。