詩人 黒川隆介とお酒を嗜む。第四回〈Nephew〉

第4回となりましたが、はじめましての方もいるでしょう、黒川隆介です。詩を書くこととコピーライター業を生業としている者です。今月、東京在住なのに勢いで函館にも家を借りまして、ただいま函館の森に囲まれた湖畔のベンチでこの原稿を読み直しています。
きつねがこっちを見ています。

今回は代々木公園にある「nephew」さんに来ました。昨年2021年の4月にできたということで老舗というよりはニューフェイス感があります。駅から徒歩数分と短い距離ではありますが、街柄でしょうか、お洒落な方々とすれ違いますね。
そしてデザイン事務所が運営されているとあって、内装がユニークです。あの商店建築にも取り上げられたとか。

アメリカの映画、たとえば「オースティンパワーズ」の世界に飛び込んだような鮮やかさがあります。照明やテーブル、窓枠、額装された絵、全体として円形が多いのは気のせいでしょうか。素敵なはにかみ笑顔でお店のあれこれを教えてくれるスタッフの桑原さんのヘアスタイルも丸みを帯びています。コンセプトが一貫している、細やかなところからそれが伝わってきます。そして店長さんが着ているシャツがまたおしゃれ、どこのものか聞いておけばよかった。

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■ Shop Information
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〒151-0063 東京都渋谷区富ケ谷1-7-2
営業時間:10:00〜17:00、19:00〜25:00
定休日:月曜日

人気ドリンクの「レモンクリームサワー」(1,400円)をいただきます。
男の性分からすると注文するのに照れくささもありそうな愛らしい見た目ですが、意外と年配の男性陣からも人気とのこと。喫茶店で注文するクリームソーダのような感覚で親しまれているドリンクのようです。レモンの酸味とクリームのまろやかさが相まって、絶妙な美味しさ。その外見に手に持つことを恥ずかしがっていた自分がもはや恥ずかしい。ひょっこりと乗っているチェリーもおいしくいただきます。
ちなみに、髭をはやしている男性は私のようにクリーム白ひげにならないよう用心しましょう。

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つづいて食事は「ブッラータチーズと季節のフルーツのカプレーゼ」(1,600円)を。
これはチーズ料理というよりは洗練されたスイーツとでも言いますか、パイナップルとブッラータの重なり方により奥行きのある味わい。そのたたずまいとは裏腹に、お酒にも相性がよく杯数が進みます。今日は2,3杯で帰ろうと思っていたのに、今日こそは決めていたのに。

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東京のことを、あらゆる地方からシルクロードで結ばれた終着地のように思うことがあります。
スタッフの桑原さんは福岡から上京してきたそうですが、「このお店が東京の窓口になった場所」と語ってくれたように、代々木公園という一見ハイソに思える地にありながら、シルクロードをこえて東京に来る人たちを温かく迎え入れてくれるムードを感じました。

こうしたところは男一人では入りづらい、自分のそんな感受性自体がもはや古臭いものであるのかもしれないなと、茨城のり子さんの偉大なる詩「自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ」の一節を思い出したのでした。

撮影している間にも若い女性たちがオープンはまだかとお店に並び始めているのを見て、
ここまで多くの女性に囲まれたのは体育の着替えの際に間違えて女子の教室を開けてしまったとき以来だとまた旧い無益な記憶を思い出しました。

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ページ最下部にあることもあり、毎度気がついていない方もいそうですが、
個人的にはメインの書き下ろしの詩で今回も締めくくりたいと思います。
どうぞ。

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WRITER
黒川 隆介 -Kurokawa Ryusuke-
16歳から詩を書き始め、国⺠文化祭京都2011にて京都府教育委員⻑賞を受賞。最新の詩集は『この余った勇気をどこに捨てよう』。連載にマガジンハウス『POPEYE Web』での「私的にいいとこ、詩的なところ」や、タワーレコードのWebメディア『Mikiki』での「詩人・黒川隆介のアンサーポエム 」がある。脳科学者からラッパーまで枠を超えた対談を多数行い、雑誌『BRUTUS』の本特集でも対談が4Pに渡り組まれる。詩人の傍らコピーライターとしての一面も持ち、企業の広告コピーも手がける。