詩人 黒川隆介とお酒を嗜む。第三回〈Little Otto〉

近頃は三日酔いになるまで飲むことが減った黒川隆介です。詩の連載とキャッチコピーの締め切りにおびやかされる暮らしのはざまで、赤霧島ソーダ割りかハーパーソーダを飲んでいます。
私的な二日酔いおすすめグッズは、レバウルソゴールド、酒豪伝説、OS-1となっています。
(その他おすすめがあれば教えてください)

今回お邪魔するお店は、学芸大学駅から徒歩1,2分のLittle Ottoさんです。
学大というと呑み助が多いイメージですが、商店街があったり、老若男女が行き交っていたりといざ降り立ってみると生活感のある、住み心地がよさそうな街ですね。街と町の中間といいますか。

220809_kurokawasann_003_002.jpeg

■ Shop Information
Little Otto
〒152-0004 東京都目黒区鷹番3-7-1
営業時間:18:00~24:00
定休日:日曜日



220809_kurokawasann_003_003.jpeg

ワイン、タリスカーのスパイシーハイボールがよく出るとのことで、一杯目は白ワイン「タレニ ヴィオニエ(770円)」をいただきます。
イタリアワインを中心に店主のユカさんが日々「これだ」というものを探し回っているということで、そのセレクトの中から日替わりでワインが登場します。
この一杯はシチリアのワイン、華やかで飲みやすい印象。

Little Ottoさんに来てはじめてワインを飲むようになり、ワイン好きになったといった方も多いようで、女性のお客さんでもワインを片手にといった様子が多く見受けられます。

そして、ブナハーブン、ラガーブーリン、ラフロイグ、ボウモアと、癖の強いお酒が並んでいますね。いわゆるバーや居酒屋に通常置いてあるウィスキーやバーボンが見当たらないことから、癖の強いお酒を飲むクセの強いお客さんが往来していることが想像できます。
この辺りのラインナップは、ユカさんご自身がピートの効いたスコッチウイスキーが好物とのことで、クセモノ好きの側面が反映されています。

220809_kurokawasann_003_004.jpeg

こちらの料理をはじめて食べる際には覚悟しておいたほうがいい。胃袋をつかまれるというより、胃袋に感情移入します。自分の胃や腸は、こうしたものを消化したいんだなと。なにこれ、うま、かゆ、うま、と。長州力さんの「飛ぶぞ」はここから来ているのではないか。独創性、意外性、味覚の再現性、とびきりです。

今回注文したのは「店主の気まぐれ おつまみ盛り合わせ(1100円)」
・いぶりがっこ入りポテトサラダ
・自家製鶏ハム
・ジャガイモを練り込んだえんどう豆とチーズのフォカッチャ
・シチリア産グリーンオリーブ
・クミンシード入り紫キャベツのマリネ
・キャロットラペ
・とうもろこしの冷製スープ

220809_kurokawasann_003_005.jpeg

人は3歳から5歳の間によくしていたことが将来の仕事に反映されるといった話がありますが、ユカさんは子どもの頃から料理をつくるのが好きで、アパレル業界でばりばりと働いていくなかでも、料理から離れることはなかったそうです。幼少期にすでに小麦粉をこねてうどんをつくっていたとか。そうしてホームパーティで料理を振る舞ったり、都内のクラブでフードを提供するようになったりと研鑚されていき、一度食べた方々からのまさに”口コミ”でその腕前が各地で噂されるようになりました。

そんな道程に「こんなに美味しい創作料理をつくれるなら、お店を出せばいいのに」といった友人たちの声を受け、アパレルから飲食店へと舵を切り、Little Ottoが誕生するに至ります。

220809_kurokawasann_003_006@2x-100.jpg

アウトレイジのキャッチコピー「全員悪人」ではないですが、こちらLittle Ottoは店主含めて常連さん「全員人見知り」ということで、ふらっと立ち寄っても無理に会話を仕向けられるようなこともなく、一人でいさせてくれる、という束の間の飲み方も味わうことができます。

そして、「ここの料理には愛情がこもっている」そう常連の皆さんが口々に言う理由に今回の取材で少し触れられたような気がします。それは「好きな人しかお店に入れないから」と冗談っぽくユカさんが言うように、”お客さん”ではなく、”好きな人”に料理をつくっているからではないかなと。
好きな人に出す料理は、そりゃあ抜群に決まってる、好きな人たちと飲む酒もそりゃ格別にきまってる。そんな普遍的で奥行きのあることを思い出させられる一夜でした。

それでは、今回の夜をあらわす詩はこちら。

220809_kurokawasann_003_007 (1).png

&meal banner_meeth.jp@2x.png
WRITER
黒川 隆介 -Kurokawa Ryusuke-
16歳から詩を書き始め、国⺠文化祭京都2011にて京都府教育委員⻑賞を受賞。最新の詩集は『この余った勇気をどこに捨てよう』。連載にマガジンハウス『POPEYE Web』での「私的にいいとこ、詩的なところ」や、タワーレコードのWebメディア『Mikiki』での「詩人・黒川隆介のアンサーポエム 」がある。脳科学者からラッパーまで枠を超えた対談を多数行い、雑誌『BRUTUS』の本特集でも対談が4Pに渡り組まれる。詩人の傍らコピーライターとしての一面も持ち、企業の広告コピーも手がける。