On Beauty: Ayumi Kusumi #23 How to enjoy loneliness

2024.03.12
雑誌メディアやご自身のSNSを中心に、シンプルで丁寧な言葉と美しい写真で織りなす日常や世界観に注目が集まるエッセイスト久住あゆみさんの連載。


久住さんが考える「美」とは?

On Beauty: 孤独の愛し方

イギリスに暮らし始めて一ヶ月が経ちました。
子どもたちは郊外にある全寮制の学校、夫と愛犬は東京、そしてわたしはロンドンで一人暮らし。
学校は全寮制なのになぜあなたもロンドンに?と問われることもありますが、彼らの学校は長い週末や長期休暇などに加え休みがとても多いので、私も一緒にこちらへ来て出来る限りのサポートをすることになったのです。

とはいえ、この一ヶ月で一緒に過ごせたのは僅か一週間ほど。それ以外はずっとひとりで過ごしてきました。
家族がバラバラに暮らすようになって寂しいか?と聞かれると、やはり寂しいです。とても。
では、孤独か?と聞かれると、孤独は感じないのです。

離れているからこそ、相手を考える時間が増えました。電話でもメールでも、毎日想いを伝えて、前にも増して心でしっかりと繋がろうと努める。

日々感じる寂しさは、自分にとって相手の存在がいかに大きなものなのかを教えてくれるもの。
だからこそ、会えた時はお互いの存在に感謝して心から向き合える。
だから、寂しくても孤独ではない。相手を思う気持ちはいつも暖かいですから。

ひとりでいることイコール孤独ではなく、それは孤独の要因のひとつに過ぎないということを知りました。
多くの人々に囲まれた時にこそ孤独を感じる人もいるでしょう。
誰かといることは寂しさを和らげるかもしれませんが、孤独を癒すことはできません。
多くの時間を共に過ごしても、それだけで、心が通じ合うことはありません。
一緒にいても心を通わせることがなければ、一人でいる以上に孤独を感じるかもしれません。

心から理解し合える家族や友人、仲間がいれば、たとえ一人でいる時も、心はいつも温かさを感じられるのではないでしょうか。
もし、ひとりでいることが「孤独」に感じる時は、その感覚の呼び方を「孤高」に改めましょう。
「孤独」という言葉には少し否定的な響きがありますが、「孤高」は誇り高く、凛とした姿をイメージさせますね。

あるローマ皇帝の言葉を借りましょう。
「絶えず波が打ち寄せる岬のように立つこと。岬は厳として立ち、水の泡立ちはその周りで眠る」
自分自身がしっかりと立っていれば、どんな気持ちになってもそれは岬に向かって打ち寄せる波のしぶきであるだけのこと。それに惑わされずに凛としていれば、いずれそれも岬の周りで静まり返ります。

そんな風に孤高を意識し続けていたら、いつしか孤独さえも愛せるようになるかもしれません。
WRITER
久住 あゆみ -Kusumi Ayumi-
エッセイスト。大阪府出身、東京都在住。上京後、モデルとして主にCM、広告、ショーなどで活動。結婚、出産後しばらくの休業期間を経てエッセイストとして始動。培ってきた感性や体験を活かし、ジャンルに捉われない様々な分野でエッセイを執筆中。