On Beauty: Ayumi Kusumi #22 In the flow of life

2024.02.07
雑誌メディアやご自身のSNSを中心に、シンプルで丁寧な言葉と美しい写真で織りなす日常や世界観に注目が集まるエッセイスト久住あゆみさんの連載。


久住さんが考える「美」とは?

On Beauty: 人生の流れの中で

On beauty 読者のみなさま!お久しぶりです。

突然ですが私は今、ロンドンにいます。

今年から子どもたちがイギリスの学校に転校することになり、それに伴いロンドンと東京の二拠点生活がスタートしました。

外国で生活するのは今回が初めてのこと...!

海外生活は昔から夢のひとつだったのすが、
これまで中々機会が訪れませんでした。

もしどこかに住むとしたら子育てが落ち着いた頃かなぁと
ぼんやりと想像はしていたのですが、まさかこんな早い時期に訪れるとは。願いってどんなきっかけで叶うのか分かりませんね。

ただひとつ、今までの経験ではっきり分かることはずっと思い続ければいつかは必ず現実になる。ということ。
たとえそれが想像する形でなくても。

渡英することが決定した時。
まず私の胸に込み上がってきた感情は「不安」でした。
この時、自分に対してとても意外な気持ちになったんです。昔から、環境が変わることを望み、新しい世界に飛び込む事に対して、胸を弾ませてきたタイプでした。
だからこの「不安」という気持ちが湧き上がった時、自分でも気付かぬうちに保守的になってきているということに気付いて驚きました。(理由は年齢を重ねたから?母親になったから?日々の思考の積み重ね?)

子どもたちの反応はそんな私とは対照的にとても素直なもので。住み慣れた環境や人と離れるのはもちろん寂しい。だけど未知の世界へ足を踏み入れることに対する好奇心の方が何倍も上回っているんです。
不安の数より楽しみの数を数えてる。

一緒に時間を過ごしていても、今私が見ている世界と彼らが見ている世界は明度と彩度が明らかに違うのだと実感しました。そしてそれが若さなのだと。

そんな、未来に希望と時間がたっぷりある彼らを見ていると気付かされることがたくさんあります。

私は今30代後半ですが、ここまであっという間に過ぎたように思います。今まで生きてきた時間をもう一度繰り返しただけですでに70歳に!?人生は思っているより長くはないのだと切実に思います。
そしてその最後の瞬間は幸か不幸か誰にも予想できないもの。後60年生きられるかもしれないし、もしかすると今日の夕方、突然死が訪れるかもしれない。
いつだって今日が人生で一番若くて、だから何かをするチャンスはいつもこの瞬間の「今」しかないんですね。

その「瞬間」はいつだって限られた時間の中にしかない。その中で何かを選択すると、他の何かから距離を置いたり、時にはきっぱり捨てなくてはならないこともある。

だけど、何を残そうとか何を捨てようとか先回りして無理やり考えても、どこか腑に落ちなかったり、結局うまくいかないことも多いですよね。最近はそんなに無理して「頭」で答えを導かなくてもいいかなと思うようになりました。

「今」を一生懸命に生きようと夢中で行動していると、自然と必要なものは自分に残り、不必要なものは離れていく。
「人生を流れに任せる」という言葉の意味は、そういうことだと思うのです。(※一生懸命に生きるということが前提ですが。)

樹木は春に花を咲かせ、夏に緑を生い茂らせる。
秋になると見事に紅葉し、その黄色くなった葉が
冬になると一枚一枚と自然に離れて落ちていく。

それが自然の摂理。
私たち人間もきっと同じ。

たくさんのものを吸収し、実らせ、花を咲かせ、
時が来れば、潔く身を軽くすること。

離れるのは、軽くなるため。
軽いものは上へ上へと高まっていくものです。

その繰り返しの先に新たな自分のステージが準備される。
「流れ」の中で自分に自然と残ってくれたものと共に。
 

ロンドンでの新たな生活。

これからは孤独な時間も増えることになりますが、
人生を振り返った時、
実り豊かないい時期となるように、
子どもたちと共に前向きに頑張りたいと思います。
WRITER
久住 あゆみ -Kusumi Ayumi-
エッセイスト。大阪府出身、東京都在住。上京後、モデルとして主にCM、広告、ショーなどで活動。結婚、出産後しばらくの休業期間を経てエッセイストとして始動。培ってきた感性や体験を活かし、ジャンルに捉われない様々な分野でエッセイを執筆中。