わたしをつくる美的小物 vol.9 花梨

vol.8 花梨(モデル、コラージュアーティスト)

コラージュアーティストとしても活動の幅を広げている、モデルの花梨さん。アートやカルチャーに囲まれた暮らしが、生き生きとした美しさにもつながるようで……。そんなこだわりの「美的小物」を教えてもらいました。

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レコード


実家にはレコードがたくさんあって、その影響もあり自分でもレコードプレイヤーを買いました。
お気に入りは『HOSONO HOUSE』。細野晴臣さんが自分のファーストアルバムを最新版にリミックス、リアレンジしたものです。代表作をライトに作り替えちゃう感覚、臨機応変さがとても好きです。
バンドでは踊ってばかりの国が大好きで、CDもレコードも数量限定で手に入らないと思っていたのですが、ある日プレゼントしていただきました。このバンドを好きになったきっかけのアルバムです。音楽はジャンル問わず聞きますが、今日持ってきたルー・リードも、踊ってばかりの国もロックですね。今はそういう気分なのかも。メッセージ性の強いものを求めているのかな。

音楽は自分の気持ちを上げるスイッチでもあります。レコードだけでなく、 “レコードを選ぶ私”も重要で。朝起きて、レコードをかけて、コーヒーを飲む私とか。そういう小さなことが自己肯定感にもつながりますよね。自分は素敵なんだというマインドを、意識的につくるようにしています。

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本と漫画


『Zoom』(イシュトバン・バンニャイ著)は、高校生くらいのときに母から薦められた絵本です。ページをめくるごとにカメラがどんどん遠ざかり俯瞰して、視野の広がりを感じられるものなのですが、衝撃を受けました。まるで違う世界に飛んでいく、旅のような体験ができるのでコラージュ制作中にもよく開きます。

父も母もデザイナーで、カルチャー好きな家族でした。私も中学2年生くらいから漫画にハマり、絵、ビジュアルが好きな作品をたくさん読んでいきました。儚い感じが好みで、線の細い絵の画風がお気に入り。とくに大島弓子作品は私のバイブルです。言葉使いとか間(ま)、女の子の可愛さや強い好奇心は自分ももっていたい。少しシニカルなところもいいですよね。

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カメラ


〈RICOH〉のGRと〈オリンパス〉のフィルムカメラZoom μ(ミュー)。二眼レフのカメラなども持っていますが、よく使うのがこの2台です。自分のコラージュ作品用に素材を撮ることが多いので、パッと瞬間を切り取れるGRが好きですね。フィルム代が高騰しているので、オリンパスのほうは、心が動いた特別な景色などを撮るようにしています。

スマホでもバシャバシャ記録しますが、写真はその時の自分が何に興味があるのかを客観的に見ることができるのがいいですね。自分の美的センサーを測るアイテムなのかもしれません。コラージュ作品では好きな世界を作るから、思考が整理されて、心も安定します。

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この絵は、昨年行ったロンドンの蚤の市で購入しました。雑に床に置かれていたのですが、見た瞬間に好き、欲しい!と思いました。Margaret L Ingramという画家の作品で、額縁も素敵だし、構図が自分の作品の世界観にも似ている。私もこういう絵を描いてみたいです。

誰かの絵を購入したのは初めてで、今は玄関に飾っています。家具やインテリアを集めていると、自分のテイストを再発見する楽しみがありますね。無意識に選んでいたものが北欧系の家具だったとか、集まったものの色や形が似ているとか。好きなものは全部目に見えるところに置いておきたい。カレンダーとかポスターとか、日常的に視覚に入るものすべてが、ワクワクするものであったらいいなと思うから。

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ジェルネイル


あまりマメではないのですが、何かひとつちゃんとすることの良さに気づきまして。ネイリストの友人に定期的に足の爪のジェルネイルをお願いしています。爪をケアすると大人になった気がしますね。ふと足の指が目に入ると、気持ちが上がるんです。

足の爪を綺麗にしてあげられている自分に余裕を感じて、大人になったと感じています。

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楽しい気分でいることが大切。


自分が楽しくて気分がいい状態でないと美しくいられない。だからテンションを上げるために日常的にそばに置いているアイテムを選びました。好きなものは目に触れていたいし、自分が選ぶものを観察して、私は今こういうものを美しいと思っていると知ることもできます。

憧れの女性。


25歳になってやっと流されないでいられるようになった気がします。周りを気にしたこともあったけど、自分は自分でいいと教えてくれたのは母や祖母ですね。祖母のことをグランマって呼んでいるんですけど、彼女は50代から祖父とジュエリーショップを始めた人。物知りで、自立していて物怖じしない。80歳を過ぎてモデルも始めたんですよ。グランマの生き方が憧れかな。
PROFILE
花梨(かりん)
モデル、コラージュアーティスト。モデル活動のほかコラージュアーティストとしても活躍し、2021年には代官山〈AL〉にて初の個展を開催した。国内外の雑誌へアートワークを提供し、アパレルブランドとのコラボレーションアイテム、音楽CDのジャケットなど活動の幅を広げている。映画『大阪古着日和』ではヒロイン役を演じた。

*撮影小物はすべて花梨さん私物。

Photography : Mina Soma
Text : Nobuko Sugawara(euphoria factory)