わたしをつくる美的小物 vol.8 安藤裕子
2023.05.18
vol.8 安藤裕子(シンガーソングライター)
色褪せない透明感と、唯一無二の存在感で活躍しつづけるシンガーソングライターの安藤裕子さん。心に直接作用する、ちょっと不思議で愛らしい「美的小物」を紹介してくれました。
青紫色の大きい石が、母方の祖父が書斎に置いていたアメジストです。小さい頃に憧れていて、祖父から譲り受けました。ずっと石を集めるのが好きで、校庭で違う色の石を集めたりしていたんです。そのDNAなんでしょうか、娘も石好きですね。大人になっても変わらずで、鉱石屋さんで好きな石を見つけると手に入れてきました。お気に入りは水を内包したジャカレーです。
ジュエリーにはあまり興味がないんですが、石を身につけるのは好きで、ブレスレットにしてジャラジャラさせたりもしています。安心するんですね、お守りみたいで。
1980年代後半くらいかな、母がブティックで勤めていたこともあって、きらびやかなブローチをたくさん持っていました。私には遠い世界のものだと思っていたんですが、大人になるにつれ好きになり、自分でも集めるようになりましたね。
作家ものもあるし、ハイブランドのものも、カジュアルなものもあります。基本的にラフな格好なのでアクセサリー類はほとんどつけませんが、日常の自分に馴染まないものを愛でることは大好き。ライブや撮影など、自分が異世界にいくときに身につけることが多いですね。かじられた赤いりんごのブローチは『ドラマチックレコード』のMVで、とんぼの帯留めは金田一耕助をオマージュした『骨』のMVで登場しています。CHANELのイヤリングは昔親に贈ってもらった思い出の品です。
レコードのジャケ買いみたいに、古本の“装丁”買いを一時期よくしていました。そのなかのお気に入りが、棟方志功の版画が美しい谷崎潤一郎の小説です。
古本屋さんに通うのは、少し昔を生きた人たちのセンチメンタルを感じられるのが好きなのかもしれません。読んでもいいし、読まなくてもいい。現代の本も、装丁が好きだったら本棚に入れておきたくて購入しますね。
幼い頃にデパートの屋上で見た映画を鮮烈に覚えていて、それがなんだったのかずっと気になっていました。大人になって、サンリオ製作の人形アニメーション『くるみ割り人形』だったと知るんですが、古本屋さんでその書籍版を見つけたときはとても嬉しかった。そんなふうに、自分がワクワクするものを探しつづけて生きている感じがします。
自分でデザインもするし絵も描くので画材は多く持っていますが、これは、このモノ自体が絵本みたいで可愛くて、持っておきたくて手に入れました。
娘も絵が好きなので、「ママはこっちのパステルを使っていいよ」なんて言われながら一緒に愛用しています。誰に見せるわけでもないものを愛でる、という行為が私には大切です。
これはモロッコで買った魔法の杖と、アンティークショップで見つけた古い薬瓶です。変なやつだと思われてしまうかもしれませんが(笑)、ずっと魔女になりたいと思って生きてきました。子どもの頃は、空想の世界で一人遊びをすることがほとんどで、その延長で魔女への憧れが残っちゃったんでしょうね。
ずっと一人で遊んでいたけれど、小学校4年生で初めて同じ価値観の親友ができました。二人で図書館にこもって本を読んだり、こっそりいたずらをしかけたり。空を飛べると信じていたのもその頃の話です。
二人で空想の世界を形にするべく、あまり大きな声では言えないような遊びもたくさんしました。あの頃の思い出が、今の私を作ってくれているんだと思います。
私の「美的小物」は、自分の内側を形成するもの。年齢を重ねると食欲も若いときほどはなくなるし、根本的な欲が薄まるじゃないですか。だから愛を感じるものがないと、人生が灰色になってしまう気がして。何かにワクワクしたり、愛でる気持ちを大切にしています。
子どもの頃から好きなものや変わっていない部分が多くて、そのささやかなサンクチュアリを守っているのかもしれません。
とはいえ、外見も大切で。コロナ禍でトレーニングをサボっていたし、ゆるい服ばかりを着ていたこともあって体重が増えてしまって。最近わざとタイトなデニムを買って、おなかに意識を向けるようにしています。内面を大事にするけど、内面だけでもダメだなって(笑)。
石
青紫色の大きい石が、母方の祖父が書斎に置いていたアメジストです。小さい頃に憧れていて、祖父から譲り受けました。ずっと石を集めるのが好きで、校庭で違う色の石を集めたりしていたんです。そのDNAなんでしょうか、娘も石好きですね。大人になっても変わらずで、鉱石屋さんで好きな石を見つけると手に入れてきました。お気に入りは水を内包したジャカレーです。
ジュエリーにはあまり興味がないんですが、石を身につけるのは好きで、ブレスレットにしてジャラジャラさせたりもしています。安心するんですね、お守りみたいで。
アクセサリー
1980年代後半くらいかな、母がブティックで勤めていたこともあって、きらびやかなブローチをたくさん持っていました。私には遠い世界のものだと思っていたんですが、大人になるにつれ好きになり、自分でも集めるようになりましたね。
作家ものもあるし、ハイブランドのものも、カジュアルなものもあります。基本的にラフな格好なのでアクセサリー類はほとんどつけませんが、日常の自分に馴染まないものを愛でることは大好き。ライブや撮影など、自分が異世界にいくときに身につけることが多いですね。かじられた赤いりんごのブローチは『ドラマチックレコード』のMVで、とんぼの帯留めは金田一耕助をオマージュした『骨』のMVで登場しています。CHANELのイヤリングは昔親に贈ってもらった思い出の品です。
装丁の美しい本
レコードのジャケ買いみたいに、古本の“装丁”買いを一時期よくしていました。そのなかのお気に入りが、棟方志功の版画が美しい谷崎潤一郎の小説です。
古本屋さんに通うのは、少し昔を生きた人たちのセンチメンタルを感じられるのが好きなのかもしれません。読んでもいいし、読まなくてもいい。現代の本も、装丁が好きだったら本棚に入れておきたくて購入しますね。
幼い頃にデパートの屋上で見た映画を鮮烈に覚えていて、それがなんだったのかずっと気になっていました。大人になって、サンリオ製作の人形アニメーション『くるみ割り人形』だったと知るんですが、古本屋さんでその書籍版を見つけたときはとても嬉しかった。そんなふうに、自分がワクワクするものを探しつづけて生きている感じがします。
〈トンボ鉛筆〉のIROJITEN
自分でデザインもするし絵も描くので画材は多く持っていますが、これは、このモノ自体が絵本みたいで可愛くて、持っておきたくて手に入れました。
娘も絵が好きなので、「ママはこっちのパステルを使っていいよ」なんて言われながら一緒に愛用しています。誰に見せるわけでもないものを愛でる、という行為が私には大切です。
魔法の杖
これはモロッコで買った魔法の杖と、アンティークショップで見つけた古い薬瓶です。変なやつだと思われてしまうかもしれませんが(笑)、ずっと魔女になりたいと思って生きてきました。子どもの頃は、空想の世界で一人遊びをすることがほとんどで、その延長で魔女への憧れが残っちゃったんでしょうね。
ずっと一人で遊んでいたけれど、小学校4年生で初めて同じ価値観の親友ができました。二人で図書館にこもって本を読んだり、こっそりいたずらをしかけたり。空を飛べると信じていたのもその頃の話です。
二人で空想の世界を形にするべく、あまり大きな声では言えないような遊びもたくさんしました。あの頃の思い出が、今の私を作ってくれているんだと思います。
愛しいと思う小物を集める
私の「美的小物」は、自分の内側を形成するもの。年齢を重ねると食欲も若いときほどはなくなるし、根本的な欲が薄まるじゃないですか。だから愛を感じるものがないと、人生が灰色になってしまう気がして。何かにワクワクしたり、愛でる気持ちを大切にしています。
子どもの頃から好きなものや変わっていない部分が多くて、そのささやかなサンクチュアリを守っているのかもしれません。
タイトなデニムを新調
とはいえ、外見も大切で。コロナ禍でトレーニングをサボっていたし、ゆるい服ばかりを着ていたこともあって体重が増えてしまって。最近わざとタイトなデニムを買って、おなかに意識を向けるようにしています。内面を大事にするけど、内面だけでもダメだなって(笑)。
PROFILE
安藤裕子(あんどうゆうこ)●1977年生まれ。2003年にミニアルバム『サリー』でデビュー。CDジャケット、グッズのデザインやミュージックビデオの監督も手がける。最新作は2021年にリリースしたアルバム『Kongtong Recordings』。
安藤裕子(あんどうゆうこ)●1977年生まれ。2003年にミニアルバム『サリー』でデビュー。CDジャケット、グッズのデザインやミュージックビデオの監督も手がける。最新作は2021年にリリースしたアルバム『Kongtong Recordings』。
*撮影小物はすべて安藤さん私物
photography : Kengo Motoie
text : Nobuko Sugawara(euphoria factory)
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