今さら聞けない私たちのからだのこと - デリケートゾーンのケア

2023.05.08
あなたのからだのこと・からだの中で起きていること、あなたはどれだけ知っていますか?

好きなことに対しての熱量は高いのに、自分のからだのこととなるとついつい疎かになってしまったり、後回しにしてしまったり。悩みがあっても「今さら聞くのは恥ずかしい」気持ちが顔を出してきてそのままにしてしまったことはありませんか?

「もっと早くに知っておけばよかった」を巻き戻すことはできないけれど、「今知ってよかった」を重ねていくことはできます。この連載では、sowaka women’s health clinicの竹元葉先生に、私たちのからだのこと・からだの中で起きていることを基本の基から聞いていきます。
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デリケートゾーンのケア

腟内環境を守るラクトバチルスとは?


いつものようにそもそもの質問ですが、デリケートゾーンがにおう理由ってなんでしょうか。においが気になる時期と、気にならない時期でも差があることも気になっています。

竹元先生
正常な場合でも少し酸っぱいにおいがします。ラクトバチルスという乳酸菌の一種が、腟の中を酸性に保つことで嫌な菌が入ってこないように環境を守ってくれています。腸内細菌でいう善玉菌のような存在です。(乳酸菌なので)正常な状態でもヨーグルトのような酸っぱい匂いがするのは割とふつうのことなんです。

ただ、魚の腐ったようなにおいがしたり、かゆみがあったり、異常にオリモノの量が多い場合は注意が必要です。細菌性腟症や性病などになっている可能性もあるので。

基本的に正常な場合でもにおいがするのは問題ないことはわかりましたが、病院に行ったほうがいい基準や、判断材料になるものはありますか?

竹元先生
明らかにいつもと違うにおいがする、自分で皮膚の状態を見てみて赤くなっているなど少しでも気になるのであれば、受診していただいた方がよいかもしれません。ずっと気になったまま生活しているより、検査をして結果的になんともなければそれで安心できると思います。


前の連載でもお話しいただきましたが、もっと気軽に産婦人科に相談に行けるようになるといいですよね。

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匂いを解消するための洗い過ぎはNG!


病院に行くほど気になるわけではないけど「なんとなく気になるにおい」を解消するために、念入りに洗ってしまいがちな方はわたしを含めて少なくない気がするのですが、デリケートゾーンの洗い方を紹介している記事はたくさんありつつ、どれが正しいのか悩んでしまいます。

竹元先生
まず言えることとしては、洗いすぎは本当に良くありません。気になるからといってゴシゴシこすってしまうと皮膚を傷つけてしまいますし、奥の方まで洗ってしまうと腟内環境を守っているラクトバチルスまで流れてしまう可能性もあります。

ボディソープや石鹸で洗っている方も多いですが、刺激が少ない専用のソープで優しく洗ってあげるほうがいいと思います。

私もボディソープで洗うのは刺激が強そうということで、専用のソープがきれているときは洗顔フォームで洗ってしまうことがあります……。

竹元先生
ものすごく刺激が強いものでなければいいとおもいますが(笑)、最近は乳酸が配合されているソープや薬用のソープなど、さまざまなメーカーさんがフェミニンウォッシュを出しています。選択肢はたくさんあるので、自分にあうものを見つけていただければと思います。

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専用のソープがあるということ自体、私はここ2-3年で知ったのですが、もっと広まって欲しいですね。デリケートゾーンのケアとしては陰毛の処理についても気になります。

竹元先生
好みの話ではありますが、個人的には処理されていた方が清潔感は保てると思います。毛に排泄物を拭いたティッシュや排泄物そのものが絡んでそのままになってしまう方もいらっしゃいます。排泄物がついたまま蒸れてしまうとにおいの原因になることもあるので、毛量が多い方は少し処理してあげるとよいかもしれません。

自分にあう生理用品の使い方を見つけよう


他にデリケートゾーンにとって良くないことがあれば教えてください。どのような下着を選べばよいのでしょう。

竹元先生
締め付けが強すぎるショーツはよくありません。最近流行っている吸収ショーツも、使い方によってはデリケートゾーンに負担を与えることもあります。〇〇ml吸収できます! といった宣伝がなされていますが「吸収ショーツを履いておけばいいや」と多い日にもかかわらず長時間履いていて、バイキンが増えてしまった(デリケートゾーンの調子が悪くなってしまった)患者さんもいらっしゃいます。サステナブルではないかもしれませんが、ナプキンやタンポンなど使い捨ての生理用品をこまめに変える方が清潔さという意味では勝ります*。例えば普段から経血の量が少ない方や(月経の)終わりかけは吸収ショーツを使ったり、タンポンや月経カップと合わせて使用するなど、月経の様子や特徴、肌のコンディションにあわせて自分に合う使い方を見つけていただければと思います。
*タンポンも、入れっぱなしにすると細菌感染を起こすことがあるので、使用時間を守ってこまめに取り替えることが大切です

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子どもの頃にデリケートゾーンのケアについてしっかり教わった記憶がないのですが、親が子どもにデリケートゾーンの洗い方について話すときはどのようにしたらいいと思いますか? 私は遠い昔桶にお湯を張ってパシャパシャ洗うんだよ、と教わった記憶があります。

竹元先生
どのタイミングがいいのかは家庭の事情によってさまざまですが、一緒にお風呂に入る時などがいいかもしれません。小さい子は小陰唇などが発達しきっておらず、あまり入り組んだ構造にはなっていないので、ソープを泡立てて優しくなでて洗ってあげてね、と伝えてあげられるといいですね。

生理が始まったり陰毛が生えてきたり、それぞれのステージによってどのように伝えていくか変わってくると思いますが、日常的にそれをタブー視するというよりは「清潔にしておくことが大切だよ」と自然に共有してほしいです。

日常の中で伝えていくということですね。これは個人的な話ですが、銭湯や温泉などの公共の場でデリケートゾーンを洗うのが恥ずかしいと思ってしまいます。見られていないのはわかるのですが、下を向いてもくもくと洗っているのを客観視するとなんともいえない気持ちになってしまう……。

竹元先生
みんな洗うので恥ずかしがらなくてもいいと思いますが、羞恥心があることは悪いことではないですよ。温泉も銭湯も日本独自の文化だと思いますが、女性が大切なところを清潔に保つことが公共の場で当たり前に行われていることが意識的に広まっていくといいなと思います。



interview・text:貴子