美しさについて。 vol.5 齋藤りょう子

2023.04.01

vol.5 齋藤りょう子(瞑想家)

ヨガのプラクティスを通じ、心からアプローチして身体を調えるマインドフルネス瞑想を学び、瞑想家として活動する齋藤りょう子さん。呼吸法、食事、お茶などさまざまな角度から、それぞれの人に合う方法を提案し、本来の自分らしい姿に戻るためのサポートをしています。ホリスティックな観点から瞑想をシェアする齋藤さんが考える、美しさについて聞きました

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——ヨガとの出合いについて聞かせてください。

特別なきっかけはなく、15年前ほど前に友人と訪れたスポーツジムで、ヨガのクラスを受けたのが最初です。そのときに、これまで感じたことのない呼吸の気持ちよさがあり、マインドもすごくスッキリして、身体が安定したことに衝撃を受けたんです。それまでは、仕事が忙しいからと自分をあまりケアせずにいたので、整うという感覚を知らなかったんですよね。そこから、ヨガの哲学や生理学を学べるスクールを見つけて入学しました。

——2012年からはヨガを指導されていますが、インストラクターになろうという意識は最初からあったのでしょうか?

いえ、そういう意識は全くなかったんですが、ヨガを始めてから体調やマインドの状態が驚くほど良くなったので、友人や当時勤めていた会社の方々にもヨガを体験してもらうことが増えたんです。そうすると、喜んでくれるのがすごく嬉しくて。ヨガを伝えて、誰かに喜んでもらえたり、誰かを癒やすことに自分の時間を使いたいと思うようになりました。

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——現在、齋藤さんが指導されている瞑想をメインとするヨガとは、どのようなスタイルなのでしょうか?

ヨガをして身体を整え、呼吸が変わると、自然と心の動きは変わるもの。なので「瞑想をやるぞ!」と意気込まなくても、瞑想が生じやすい状態にするために、強い動きや呼吸ではなく、より微細な身体感覚に気づくことができるような動きのヨガと呼吸法を行っています。ハタヨガをベースに、自分の身体で試してみて良いと実感したものを組み合わせて、一番いい方法を提案したいと考えています。

——マインドフルネス瞑想もシェアされていますね。瞑想は初心者には難しいという印象もあるのですが、最初からうまくいったのでしょうか?

私自身、最初は瞑想が難しくて、きちんとできているのかどうかもわからなかったんです。全然手応えがないがゆえに気になってしかたなくて、もっと知りたくなりました。それで実際にマインドフルネス瞑想を体験したり、勉強を始めたら、時々、今この瞬間がそうだ!と思えたり、うまくいく感覚がちょっとずつ増えるようになりました。

どうしても瞑想できないときは、書く瞑想法「ジャーナリング」で心にあることを書き出すと、頭の中が整理されて、自分は気づけなかった自分がすっと出てきたりすることがあります。

——瞑想を実践したことで、どんなふうに心の変化がありましたか?

マインドフルネス瞑想を始めて約8年目になりますが、心が静かになるんですよね。日々の忙しさだったり、いろんな欲望が重なったりすると、もともともっている本質が見えなくなってしまうことってあるじゃないですか。つい環境や周囲の人たちの影響を受けて、流されてしまったり。でも瞑想をすると、自分にちゃんと意識が向かって、一番自然と思えるところに戻れる気がします。自分のことって全然わからないものだなと思ってはいるけれど、以前よりは自分について理解ができるようになりましたし、不自然な選択をすることが少なくなったと感じています。

実践されている方も、他者の意見を尊重できたり、思いやりのある選択ができる方が多いんですよね。日々のちょっとした瞬間に、瞑想しているときの感覚を見出せるようになり、生活が健やかになったという声も聞きますね。

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——日々瞑想をしていてもネガティブな感情に陥ってしまうときもあるかと思うのですが、そういったときに齋藤さんはどうやって対応していますか?

ネガティブになったり、傲慢な気持ちが生まれたりするときは、自分がバランスを崩しているときなんだなと捉えています。仕事を詰め込みすぎていたり、食生活が乱れていたり、自分に対して疎かになっているからそうなってしまう。そういう自分に違和感を覚えたときは、自分のための時間を取って整えることを意識します。

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——齋藤さんにとって、「美しさ」とは?

ヨガをしている人の身体って、外側にあるいろんな影響が取れていくというか、すごく純粋な状態になっていくんですよね。マットの上に乗ると、その人自身の性格や癖といったいろんなものが表出するんです。かたちの綺麗さではなく、そういう繕わない自然な姿の身体はとても美しいなと感じます。 仕事柄、日々たくさんの方の身体を見たり、触れたりさせていただくなかで、 身体にこそ本来のその人らしさが現れている、個性そのものなんだと実感しています。

——美しさを感じる「心」を養うために大切にしていることはありますか?

心のケアは後回しになりがちだと思うんですが、面倒くさかったり、わかりづらいものを見過ごさないように、今をしっかり経験していくことを大切にしています。心が見えなくならないように、いつも純粋に保てるよう丁寧に扱うこと。そういった日々の積み重ねが、その人の姿に美しさとして現れるんじゃないかと。私自身、よく心が濁るので(笑)、そうやって否定的な捉え方になっていると気づいたら、自分を満たしてあげると、浄化されたように感じるはずです。

たとえ座って瞑想をしなくても、自分を見つめられるような瞑想の瞬間って、実は生活の至るところにあるんです。丁寧にお茶を淹れて、それを飲む瞬間。お料理や掃除、洗濯をしているとき。そこで自分が本当に思っていること、感じていることに気づけるということもまずは大事だなと思います。
PROFILE
齋藤りょう子(さいとう・りょうこ)
2008年よりヨガを体系的に学び始め、2014年よりヨガを通じた活動を開始。その後、マインドフルネス瞑想を学び、それぞれのバランスを大切にした独自のヨガを展開。企業や医療へ向けたマインドフルネス瞑想を提供する。
https://www.ryoko.tokyo/

cooperation : Medicha AOYAMA TOKYO
movie&photo : Yu Inohara
text : Tomoko Ogawa
edit: Nobuko Sugawara(euphoria-factory)