わたしをつくる美的小物 vol.2 eri

vol.2 eri(DEPT Company代表)

ヴィンテージショップ「DEPT」代表であり、近年は環境問題、社会問題に対してのアクションも積極的に行っているeriさん。メイクや小物への審美眼も鋭いeriさんが近頃選ぶようになった美的小物とは。

bitekikomono_002_02.jpeg

ババグーリ ジャタマンシのシャンプーとリンス


私にとって香りはとても大切な要素。ジャタマンシというウッディかつほのかに甘さもある香りが好きで、もともと同じ〈ババグーリ〉の石けんを使っていたんですが、シャンプーもあると知って買いました。

包装紙がライトなものを選びたいので、ずっと固形シャンプーを使っていたんです。だけどこのシャンプーの容器はガラスで、プラスチックフリーなところも気に入りました。デザインも新鮮で、洗面所やお風呂場に置いてもかっこいいんです。

bitekikomono_002_03.jpeg

7 NaNaturalのカラーパレット


ビーガンでマルチユース、使いきれるコスメをつくる〈7 Na Natural〉。初めて見たこのブランドの商品は、小さな小さな口紅でした。

コスメって、ほとんど使い切れませんよね。でも〈7 Na Natural〉はきちんと使い終わるところまで設計されていて、オンラインで買った人には使い終わった容器を返送できるサービスも。そこに惚れ込んで、すぐにオーダーしたんです。

このカラーパレットは口元・頬・目元まで使えるマルチユースだし、薄いので持ち歩きも便利。ラメはプラスチックなものが多くて、メイクを落としたときに水に流してしまうのは環境に良くないんですが、これはキラキラが入っているけれどマイクロプラスチックフリー。今日のリップも〈7 Na Natural〉のものです。罪悪感なく使えるのがいいんです。

bitekikomono_002_04.jpeg

Licia Florioのリムーバー・トリートメント


〈Licia Florio〉は、イタリア・ミラノ発の、100%リサイクルマテリアルを使用したヨガウェアブランド。美容ラインとして誕生したネイルケアアイテムも、商品・パッケージともにエシカルです。オイル配合のリムーバーは、除光液特有のツンとした匂いも使用後のモサモサした感じもなく、ツヤツヤして気持ちいい。

なるべくものを増やさないようにしているけど、このブランドのものは買っていいなと思っています。昔はジェルネイルをやっていたので機械も一式持っているんですが、最近はもっぱらフットかな。

ネイルをするのは私にとってお絵描きと一緒。たとえば展覧会で見たあの絵がかわいかった、あの色がかわいかったと思ったとき、それを爪の上で表現したりします。色を混ぜてみたり、絵を描いてみたり。だからただネイルをするということよりも、何かを“創る”行為に近いかもしれません。

bitekikomono_002_05.jpeg

フレグランスアイテム


私、このフレグランスたち、どれかひとつだけではなくて混ぜて使っています。ロールオンは、DEPTオリジナルの香りを作りたくて、富ヶ谷にある〈Epo〉というヘアサロンのラボと一緒に作ったもの。森の中にある架空のお寺をイメージし、国産ガラスのパッケージにこだわって、いろいろ考えて作りました。〈AVEDA〉のチャクラ バランシング ミストは発売当初から使っているくらい大好きだし、香水は普段あまり使わないけれど〈Aesop〉のものはお気に入り。〈SyuRo〉のエッセンシャルオイルも必ずカバンに入っていますね。

匂いって、自分の層が重なっていくイメージで、意識とも連動していると思うんです。化粧水や洗剤の香りなど、他人には見えないところだからこそ、どういうものを選ぶのかは気をつけるようにしたいです。

bitekikomono_002_06.jpeg

アクセサリーと、パッチ


アクセサリーはいつもたくさん着けているんですが、LAの〈Mondo Mondo〉というブランドのジュエリー(右手中指の指輪)もよく登場するもののひとつ。デザイナーのナターシャという女性も素敵で、素敵な人がつくるものは素敵なんだなと。きちんと顔を知っているデザイナーの商品を、自分の店でご紹介できることも嬉しいです。あと、父の代のDEPTで扱っていた、イニシャルリング(左手、人差し指の指輪)も、高校生の頃から大切にしています。

メッセージをハンドプリントした布パッチは、2022年7月の衆院選のために作った「REBEL FOR THE FUTURE」で、これもアクセサリーのように毎日服のどこかしらに付けています。政治や気候危機問題のためにメディアを立ち上げたりいろいろしてますが、このパッチが一番効果があるかもしれません。アクションをするのはハードルが高いけど、実は何かしら関わりたいと思う人はたくさんいて。持っている人たちで連帯を感じられるし、言葉にしなくてもアクションをしていることになるから、マイクロアクションツールとしていいなと思う。私たちが作ったものを売ってくださるお店が全国で140カ所くらい集まったんですが、そのお店のコミュニティやお客さまとで、会話が生まれていることに希望を感じます。

bitekikomono_002_07.jpeg

ライフサイクルを考えたもの選び。


メイクは、自分がどう生きたいかを表現するためのもの。何もしたくない日はしなければいいし、赤いリップを塗りたい気分なら塗ればいい。絵を描くときの絵の具みたいに、自分を表現するためのツールです。

昔は、自分のためだけに生きていたなという反省があります。でも気候危機問題に気づいたあとの自分は本当に変わって、もう絶対に前に戻りたくない。アクションするようになって大変なことは多いけど、今のほうがいいと心から思います。地球に生きる万物がライフサイクルを持っている。だから、ものもつくるだけではなく終わりまでのライフサイクルを考えた商品や、そういう意思を感じられるか、共感できるかを重視してものを選ぶようになりました。

気持ちよく生きたいから、気候変動を解決したい。


メイクもファッションも、ある種プレジャー的なものですよね。余剰なものとして、気候変動の活動と逆行しているように思われるかもしれないけど、私はそうは思わないんです。

人間が存続していく以上、ものを生み出すことはなくならない。だったら嬉しい、楽しい、気持ちいいものをどう作るか、きちんと示してくれるプロダクトを選びたい。それがたとえ途上だとしても、向かう方向が同じ人たちを応援していくことが大切だなと思います。
PROFILE
eri(えり)
1983年NY生まれ、東京育ち。2004年に自身のブランドを立ち上げ、2015年には父親が設立した、ヴィンテージショップ「DEPT」を再スタート。環境問題や服作りの哲学、政治問題に至るまで、積極的に発信している。
https://www.instagram.com/e_r_i_e_r_i

*撮影小物はすべてeriさん私物

photo : Yoshitsugu Enomoto
text : Nobuko Sugawara (euphoria factory)