On Beauty: Ayumi Kusumi #20 Why?

2023.10.27
雑誌メディアやご自身のSNSを中心に、シンプルで丁寧な言葉と美しい写真で織りなす日常や世界観に注目が集まるエッセイスト久住あゆみさんの連載。


久住さんが考える「美」とは?

On Beauty: Why

人生には節々で大きな決断を迫られる時が訪れますね。

ここ最近、私自身のプライベートにもそんなタイミングが訪れました。
大きなチャレンジで未知のものであればあるほど、
多大な勇気と覚悟が必要で...。

そんな時、つい頼りたくなってしまったのが、
他人の意見、一般的に考えられる成功パターンといったこれまであまり気にしなかったはずのこと。

なぜなら、普段大切にしているはずの「直感」や「重きをおく価値観」といったものが大きな決断を前にすると、急に頼りなく、心細く感じてしまったから。そんな自分に対面して、弱いなぁと痛感しました。

当たり前のことですが、自分の人生とは、これまでもこれからも、他のどこにも存在しないただひとつのもの。

いろんな人に話を聞いたり、ネットで調べたりしても、あらゆるパターンを知るという意味では参考になりますが、それは必ずしも自分自身に当てはまるものではない。

安全だといわれる薬にだって、体質によって合う合わないがあるように、生きる道や考え方も、本人にフィットしなければ、つまり自分自身が幸せでなければ意味がない。

難しい決断を前に、しばらく悶々とした日々を過ごした後にわたしが立ち返ったのは、「なぜ?」と自分自身に改めて問い直すことでした。

なぜ、そう思うのか?
なぜ、私はそれを望むのか?
なぜ、今この道がベストだと思うのか?
なぜ、そうしたいのか?

何かに迷った時や思考と感情が絡まり合い、
どうにも整理がつかない...!という時に
まず、落ち着いて取り組むべきことは

この「なぜ?」に対して、自分自身でひとつひとつ回答していくこと。
始めは迷ったり、言葉に詰まったりしてもいい。

自分との対話を進めていくと、いつしか
「なぜ?」に対して「なぜなら」と心の底から応えることができる。その時にはじめて自信を持って決断できる。

深く考え、問いかけ、自分の答えに納得できたら、もう大丈夫。その先は、自信を持って歩いていけばいいだけです。

歩みながらも、また迷いはきっと出てくるでしょう。
その時はまた「なぜ?」と自分に問うてみる。

自分との対話が深いものであればあるほど、
何度も繰り返し繰り返し行われるほど、
自分だけの特別な人生が出来てゆく。
それこそが美しい人生を生きるということだと思っています。


そんな風に自分に言い聞かせて、
今はただ、目の前の愛おしい日常を噛み締める毎日です。
WRITER
久住 あゆみ -Kusumi Ayumi-
エッセイスト。大阪府出身、東京都在住。上京後、モデルとして主にCM、広告、ショーなどで活動。結婚、出産後しばらくの休業期間を経てエッセイストとして始動。培ってきた感性や体験を活かし、ジャンルに捉われない様々な分野でエッセイを執筆中。