お肌の相談所「酒さについて」-後編-

酒さってどんな病気?

皆さま、こんにちは。

第二回目は前回の続きで酒さのタイプや治療法についてお話します。
酒さについてもっと理解を深めていきましょう^^

◎ 酒さの4タイプ
酒さは臨床症状によって ① 紅斑毛細血管拡張型 ②丘疹膿疱型 ③鼻瘤 ④眼型 の4型に分類されます。

① 紅斑毛細血管拡張型(従来の分類:第1度酒さ)
顔が赤くなり、毛細血管の拡張がみられます。ほてりやヒリヒリ感があります。

② 丘疹膿疱型(従来の分類:第2度酒さ)
赤い盛り上がりや膿のたまったニキビのようなぶつぶつがみられます。ほてりやヒリヒリ感があります。

③鼻瘤(従来の分類:第3度酒さ)
鼻を中心に腫瘤を形成します。

④眼型(従来の分類:眼合併症)
眼の充血、異物感やかゆみ、乾燥、まぶしさを感じます。

酒さの患者さんはこれらの病型が複数混在することがあります。


◎ 酒さの進行段階
酒さは一般的には以下のように進行していくとされます。

・ステージ1 : 酒さの初期で、顔が繰り返し赤くなる、ほてるような症状が現れます。
・ステージ2 : 顔の皮膚表面の毛細血管拡張と赤みが常にみられる状態です。
・ステージ3 : 赤みやほてりに加え、赤い盛り上がりや膿のたまったニキビのようなぶつぶつがみられます。
・ステージ4 : 鼻が赤く膨らみ、鼻瘤が形成されます。

酒さってどう治すの?

実際にどうやって治したらいいの?と悩んでいらっしゃる方も多いと思います。
以下で具体的にお話をしていきます。

◎ 酒さの治療法
酒さの治療は、①悪化因子の除去 ②スキンケア ③医学的治療 です。

まずは、ご自身の酒さが悪化する原因を特定し、その因子を避けることが大切です。また、適切なスキンケアも治療の一つです。

適切に紫外線対策し、低刺激性の洗顔料や保湿剤を使用します。医療機関を受診し、皮膚科専門医に相談されるとよいでしょう。

今回は ③ 医学的治療にフォーカスしてご説明します。

【レーザー治療・光治療】
主に毛細血管拡張症状の改善を目的とする治療として、各種レーザーやintense pulsed light(IPL)が使用されています。

レーザーの目的は、主に酒さにおいての血管変化の治療です。例えば、酒さ患者における毛細血管拡張症です。顔面毛細血管拡張症は、肌表面からわずかに隆起した細かい血管が異常に広がることで、目に見える状態となります。これらの血管は、直径(0,1-3mm)、部位、色、及びパターンが病変により異なります。

標的に合った正しい波長を選ぶことで、レーザー光線はターゲットで最大限に吸収され、周辺構造では最小限しか吸収されないように調整することで副作用を減らすことが出来ます。それによりターゲットとなった病変のみを破壊し、周囲の組織損傷を減らし、瘢痕形成のリスクを減らします。

【抗生剤】
特にビブラマイシン、ミノマイシンといったテトラサイクリン系抗生物質の内服薬は抗炎症作用があり赤みを抑え、ニキビのような赤い丘疹や膿疱を伴う酒さに効果的です。

酒さの治療は長期的に付き合っていくことになりますので、長期内服が考えられます。

抗生剤の長期内服は、稀に肝機能障害を起こすことがありますので定期的な採血も必要です。悪化した場合は量を減らしたり、中止します。
また、ビブラマイシンは嘔気、ミノマイシンはめまいやふらつき等の副作用がありますので注意が必要です。なんらかの理由でテトラサイクリン系抗生物質が内服できない方にはマクロライド系抗生物質も有効な場合があります。

【漢方薬】
漢方薬の白虎加人参湯は体の熱を冷ます作用があり、ほてり感のある酒さの方に有効です。ほかに桂枝茯苓丸、加味逍遥散、当帰芍薬散なども用いられることがあります。

【外用薬】
・プロトピック軟膏:ステロイドと同じように炎症をおさえる作用がある外用薬ですが、毛細血管が拡張する副作用がないため、酒さの方でも使用することができます。プロトピック軟膏は欠点として、外用し始めの数日間、チクチクとした刺激感を生じることがあります。

・ロゼックスゲル:メトロニダゾールという抗菌薬を主成分とした外用薬です。以前より酒さに有効で副作用も少ないことが知られていましたが、2022年5月に保険適応となりました。

・アゼライン酸配合クリーム:アゼライン酸は主にニキビ治療薬として用いられていますが、酒さに対してもメトロニダゾールと同等の有効性を持つとされています。使い始めに軽度の刺激感を感じる人もいます。

・コレクチム軟膏:プロトピック軟膏と同様に炎症をおさえる作用がある外用薬です。比較的新しい薬剤で酒さに有効というデータは少ないものの、一部の方に効果がみられます。

・イオウ・カンフルローション:古くから使用されている外用薬です。殺菌作用や皮膚を乾燥させる作用があります。皮脂が多いタイプの酒さの方に有効ですが、乾燥しすぎる場合があるため注意が必要です。

・非ステロイド性抗炎症薬:コンベック軟膏やスタデルム軟膏といった外用薬は作用が弱いものの副作用がほぼないため、ほかの外用薬では刺激になってしまう方に用いる場合があります。AdobeStock_539594890.png
皮膚の炎症をおさえることで、酒さの赤みやニキビのようなぶつぶつを改善するお薬では、赤みはゆるやかに改善し、症状が落ち着くまで時間がかかります。

赤い盛り上がり、膿をもったぶつぶつは比較的早くに改善が認められ、一般的には数か月で改善がみられます。悪化因子により悪化することもありますが、治療をつづけることで悪化の程度をおさえることが期待できます。外用薬に加え、レーザー治療や抗生物質、漢方の内服薬を併用することもあります。

酒さの方が日常生活でできることは?

✓ 洗顔時はこすらないようにしましょう。
擦ることで皮膚炎が悪化し、赤みが増してしまいます。

✓ 酒さの患者さんの皮膚は水分量が少ないため刺激を受けやすく顔がピリピリすることが多いので、普段のケアとして保湿剤もまめに塗りましょう。

✓ 特定の刺激的な食品(辛い食べ物やアルコールなど)や、激しい運動、ストレスをできるだけ避けましょう。
毛細血管を拡張させるなどの理由で、炎症を悪化させてしまう可能性があります。

✓ 日焼け対策は念入りに行いましょう。
紫外線による日焼けは皮膚刺激となります。散乱剤のみの日焼け止めや日傘などがおすすめです。

✓ ヘパリン類似物質配合の保湿剤の使用は避けましょう。
血流がよくなり、赤みが増してしまいます。

✓ 赤みを抑えるメイクをしましょう。
メイクで赤みを目立たなくすることはQOL(Quality of Life)の向上になります。化粧品は低刺激性のものを選択しましょう。AdobeStock_696312944.png
医療現場では、さまざまなタイプの酒さの患者さまとお話をする機会があります。患者さまはとても辛い症状に悩まされており、生活の質を大きく損なっていることが伝わりました。

症状の個人差が大きい印象で、抗生剤を長期間服用してもなかなか症状が落ち着かない方もいらっしゃいます。

今回ご紹介した治療法や気をつけるべきことを実践いただくことで少しでも改善のお手伝いができれば幸いです。
WRITER
Hirashima Saki
薬剤師。meethでは商品開発に携わる。大学では薬による体内への影響を研究し、体の仕組みに詳しい。 meeth製品で10年来の肌荒れがみるみるうちに改善したことから、入社を決意。肌荒れに苦しむひとを一人でも減らすことが目標。