-meeth×Pull Push Products.- 「meeth LIFESTYLE PLATE」ができるまで

2023.06.14
6月19日より限定発売になった「meeth LIFESTYLE PLATE」。
お気に入りのものが側にあるとちょっと気分が上がるような そんなアイテムは、よりmeethを身近にそしてmeethのある生活(暮らし)を楽しんでいただけたらという想いで作られました。1つ1つ手作業で丁寧に作られたモルタル製のプレートはmeethの刻印があしらわれ、生活の中の様々なシーンで使っていただけるようなシックでおしゃれなデザインです。

今回はこのプレートの共同製作をしてくださった、meethの製品づくりと同じようにこだわりを持つブランドでありモルタル作家さんのPull Push Products.佐藤さんのスタジオにおじゃまして、プレートの製作過程を拝見しつつお話を伺ってきました。

京都のクラフト作家 Pull Push Products. 佐藤さんとmeethとの出会い。

meeth 友次(以下m):
この度は、「meeth LIFESTYLE PLATE」の製作をお引き受けいただきありがとうございました。モルタル製の細かな型抜きやテラゾ風など何パターンかデザインを作成し全国の業者さんに問い合わせしたのですがロットや金型・素材の問題でことごとく断られ、一か八かモルタル作家さんであるPull Push Productsさんにお声がけしてみました。meethからはじめてご連絡させていただいた時はどのような印象でしたか?

Pull Push Products. 佐藤さん(以下p):
そうですね、自分的にも作ることに対して前向きな時期で、自身のブランドだけでなく素材を使って再現していきたいなと思ったタイミングでお話いただいたので「是非やりたい!すごい楽しそうやな」って思いました。他の人がやるんだったら自分がやりたいと思いましたし、本当にありがたかったです。

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m:
じゃあ、すごくタイミングがよい時にお声がけしたんですね!嬉しいです。
今回製作いただいたデザインは、meethのラボのモダンな半円柱の壁面をイメージし細かな刻印がされた、何案かの中でも一番meethらしいデザインだったのですが、初回サンプルのデザインの再現性も素晴らしく感動しました。

色々挑戦もしてくださったと思いますが、繊細でやや重量もある商品なので、meethサイドはパッケージの調整にとても苦労したのですが、こちらからの製品に関するリクエストは結構むずかしくなかったですか?

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p:
いや〜難しかったですね。自分では避けてきた形だったので。
ただ、その中にやりたい要素というのが結構入っていて、テラゾは文字が入るという所で無理かなと思ったんですけど文字を入れるってのもいつかやりたい、これまでは低い直線の作品を作ることが多かったのでRや円柱とかも再現するのがおもしろそうだなぁって思いました。

ブランドイメージとモルタル素材の特性。

m:
文字の調整で潰れないようにして欲しいとか、気泡を多くしないでとか、色のことなど半円のエッジや大きさ、刻印の深さや色合いなど、何度も細やかに調整いただき、meethの製品づくりに寄り添っていただいて本当に素敵なものができて感謝しています。今回の製作で一番大変だったところはどんな所ですか?

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p:
そうですね、素材のもつ特性とブランドとして必要な(見た目の)イメージの方向性が色々ある中で、自分が今までの作ってきた作品は、粗めで暴れている感覚のものだったので比較的扱いやすかったんですが、今回いただいた洗練されたデザインイメージの場合、素材らしさを出した方よいと思いつつも気泡や色ムラが若干悪いものに見えてくることもあって、ブランドの清潔感や軽さを出すためには今までの配合を全て変える必要もあったので、そこが意外と難しかったですね。オブジェとしてならいいんですけど、例えば強度も出すために使いたい薬品があっても、それを使っちゃうと色味が変わっちゃうとか、やっぱり数を作るなかでこれまでに想像してないことも出てきて、まだまだ勉強が必要だなと思いながらやっています。(笑)

エッジを再現することの重要性。

m:
なるほど、ではこのデザインを再現するのにこだわったところはどんなところですか?

p:
やっぱりエッジですね。エッジが立ってないと緩いデザインのプロダクトになってしまうので。原型はエッジを立てて作っても、モルタルを流し込んだ時に流れ込まなかったり強度が落ちてもろくなることがあって、そこは配合でしかないのですごく気を使いました。陰影がきれいなデザインなのでモノクロで撮ってもコントラストがしっかり出る方が空気感がでるだろうなと思って、1回サンプルを作った時に「もう少し文字を深くしてもらいたい」って言われたときに、どうしても文字に入っていかない個体は出てくるので、正直ちょっと難しいかなと思ったんですけど、深みのある方でやってみて結果よかったなと思いました。

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建築デザインからのはじまり。

m:
ありがとうございます。ぐっと素敵になったので、深さを調整していただいてよかったです!

もともと私は、佐藤さんの作品を存じ上げていてファンだったのですが、モルタルを使った作家さんはとても少ない中で、モルタルでものづくりをしようと思ったきっかけを教えていただけますか?

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p:
「素材」が色々好きだったことと、作ることで食べていきたいと思って、そういう会社に3年半くらい就職をしてたんですが、辞めるタイミングで何で食べていくのかを模索していた時に、シンプルな材料で自由に物ができそうなモルタルの素材をホームセンターで買ったんです。
生活用品を作りたかったんですけど、学生時代に建築デザインを勉強していたのもあって建材でありつつ当時モルタルを使った生活用品はほとんどなかったので、そういう新しい素材が生活に入ってくるだけで、ちょっと日常が変わるのかなと思ってモルタルの素材で作りはじめました。

モルタル素材を扱うことの難しさ。

m:
なるほど。実際にモルタルを使ってみてどうでしたか?

p:
難しかったですね。当時はYouTubeも参考書さえもなかったので、配合から養生(どんな風に固めていくか)を手探りでやっていました。なので、ものすごい失敗しましたね。固めるのに電子レンジ入れてみたら鉄粉が入ってるので爆発しちゃったり、全然わからないことばかりで。時間はたくさんあったので、ただひたすら実験して…わからないことも楽しかったですけどね。(笑)

モルタルって同じ配合でも気温や湿度、水とモルタルの量、混ぜるタイミング、配合する混合液、乾燥や硬化の時間で全て仕上がりが変わってしまう。今でもわからないくらい、経験がほとんど役に立たないんですよ。そこまで精密な原料で作られていないので、同じメーカーでも買う場所によって配合が違ったりするんです。買ってきた材料を振るいにかけてできるだけ同じ状態にして使うとか、そこでコントロールできるようになってきましたね…。元々強度を出すための建材なので、焼却炉の灰を使っているとその燃えかすが入っていたり、例えば鉄分が多いと水と反応して茶色くなったり、配合してる砂なんかでもその土地土地で違ったりするらしいです。

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■モルタルを計量・調合する

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■モルタルを攪拌する

シンプルだからこそ調整が必要な工程。

m:
モルタルってそんなにコントロールが難しい素材だったんですね、素材自体への手間もかかって大変そうですが、「meeth LIFESTYLE PLATE」をつくるにあたって、製作工程を教えていただいてもいいでしょうか?

p:
ゴム型を作成し型取り・原型を製作→モルタル計量・調合→モルタル攪拌→注型(流し込み)→左官コテでならす→硬化(1日)→脱型(型から外す)→養生(保湿しながら7-10日保存容器に入れ強度を出す)→乾燥(2-3日)→研磨・補修→裏面の補強コーティング→乾燥(1日)→裏面研磨→防水加工→乾燥(2-3日)→完成

モルタルの製品の中では、今回ゴム型を使っているので比較的シンプルな工程なんですが、逆に粗が目立つんですよ。

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■上:注型(流し込み)/下:左官コテでならす

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■上:脱型(型から外す)/下:乾燥させる

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■上:裏面を研磨する/下:防水加工をする

m:
他の作品ですと、削ったり色々されてますよね。

p:
そうですね、木型とかを使ったりすると1点ずつの個体差がその味になって、ある意味逃げ道を作れるんですよね。それを排除して洗練させていくほど難しくなっていくんです。

生活に溶け込むようにモルタルを育てて欲しい。

m:
難しいことを色々お願いしててすみません。(笑)本当に1つ1つ手間がかかっていて、より大切にしたくなりますね。モルタルってエイジングというか、使い込むほどシミとか欠けも全て味わいになるので、私はmeeth製品とともに変化を楽しんで長く使ってもらいたいな〜と思っているんですが、佐藤さんはこのプレートをどんな風に使って欲しいなと思われてますか?

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p:
ブランドの方向性とは変わるかもしれないですけど、僕の中では飾って一線引いてよそよそしく使うというよりは、生活の中に取り込んで育てていくっていう感じですかね。陶器や石など色んな素材がある中で、モルタルは欠けたり洗って色むらが出たとしてもそこが味になるので、モルタルの中の完璧すぎないところが気にならなくなってきた時に、自分だけの愛着あるものとして生活の中に溶けこんだ気がするんです。
どんどんその人のものになる気がするので、そういう意味ではモルタルって欠けちゃったり気泡とかに時間を入れやすいのかなと思いますね。

m:
ありがとうございます。まさにモルタルならではですよね。

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p:
お客様1人1人が、色んな使い方でこのプレートを使ってくださるのが、私もとても楽しみです。

それでは、まだしばらく製作が続きますが引き続きよろしくお願いします。
お話ありがとうございました!



AD&Design/text: Yoko Tomotsugu(meeth Co., Ltd)
Product Design: Nobuhiro Sato(Pull Push Products.)
Photo: Saneaki Yoshida(meeth Co., Ltd)
Special Thanks: The Pack Co., Ltd.

<共同製作>
Pull Push Products.(プルプッシュプロダクツ)
2002年よりスタートした佐藤 延弘によるクラフトブランド。
京都を拠点に、デザイン、製品製作、梱包から発送までを、一貫して自身の手で行っている。素材とストーリーをモノ作りのコンセプトとし、使うときの楽しさや触れたときの質感を大切にしたアイテムを、コレクションにまとめて発表。手仕事の中で生まれる繊細さや緩やかさを大切に考え、作り手の温度が伝わる製品をゆっくりとしたペースで提案している。
https://pull-push.com/
meeth LIFESTYLE PLATE
¥19,800(税込)
材質:モルタル(本体)、強化ガラス(プレート)、クッションゴム(裏面ゴム足)
サイズ:W273mm×D181mm×H25mm / NET 1.65kg ※個体差あり

商品のお求めは「meeth store」から。

meeth store 初回販売:
2023/6/19(月) 12:00 〜(売り切れ次第終了)
*以降、毎月1日 12:00より、毎月30個限定で販売

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<お取り扱いのご注意>
□本製品は、建材などに使われるモルタル素材を使用し、手作業で一つひとつ製作しています。素材の質感を生かし、色むらや気泡、カケなどそのままに仕上げています。それぞれ異なる自然の表情をお楽しみください。
□化粧品や水滴などを吸い込みます。シミ汚れもつきやすいですが、それらも楽しめるようなデザインになっています。使い続けて変化する様子もお楽しみください。
□汚れや吸水を抑える撥水処理を施していますが、完全防水ではありません。ご使用環境によっては経年変化します。
□ご使用環境や細かなひび割れから水が漏れる場合がありますので、木製の棚や机の上でのご使用はお控えいただくか、防水性のシートなどを敷いてご使用ください。
□主な用途として、化粧品トレイ、ディスプレイトレイ、アクセサリーケース等でご使用いただけます。
□モルタルは強アルカリ性の素材ですので、濡れた状態で他の食器類と重ねたり、食用皿として使用したりしないでください。また、酸性の物を置いたり、クエン酸などのご使用はお避けください。
□食洗機などで、他の食器類とは一緒に洗わないでください。
□重量物の持ち運び用トレイとしての耐久強度はありません。大きな力を加えると破損の原因になります。
□破損の恐れがありますので、熱した鍋など高温の物を置かないでください。
□大人向け商品です。小さなお子様の手の届かないところで保管してください。

<お手入れ方法>
□トレイは硬く絞った濡れ布巾等で表面を拭いて頂くか、乾いた布で水気を十分に吸い取り、直射日光の当たらない風通しの良い場所で保管してください。
※寒暖の差や湿度はひび割れの原因になりますので、乾燥機や天日干しはお避けください。
□ガラス板が汚れた際には、軽く水洗いしていただくかやわらかいスポンジを使用し中性洗剤で洗って乾かしてください。